12才のコーギーの男の子です。
3年ほど前から存在していたという左上眼瞼の腫瘍が最近大きくなってきて、本人も気にしてこすってしまっているとのことで相談されました。
診察したところ、腫瘤が上眼瞼の90%以上を侵しており手術が困難な状況でした。
通常、腫瘍が大きく悪性の場合、拡大手術として眼球摘出をしてその周囲の組織を大きく切除する事になるのですが、今回は眼球を残し形成外科による眼瞼再建術を実施しました。ここまで大きな腫瘤の場合、手術による合併症として眼が閉じないなどの機能障害が問題となることがあります。
まずは1段階目の手術として腫瘍を切除し失われた上眼瞼を再形成するため、交差眼瞼フラップという、下眼瞼を回転させ皮弁を作ることにより上眼瞼の再形成を行いました。
次に欠損した下眼瞼については、口唇へ眼粘膜回転フラップといって上口唇を下眼瞼へ引き延ばして形成を行います。このように口唇組織を使う事で粘膜を伴って眼瞼を再建する事が可能となります。
このような皮膚の転移手術は血行障害が問題となるため高度な技術を要します。
下の写真は1回目の手術で唇の皮膚を眼に移植した写真です。
1回目の手術の後、2週間後に皮膚が生着してくれていれば次に2段階目の手術として、下眼瞼を上に移転したフラップを切離して上眼瞼として作り直します。そして、この2回目の手術後にまばたきなどの機能障害がないかをチェックしていきます。
このとおり2週間後にはきれいに皮膚が落ち着きました。
左右差はあるものの、無事に眼瞼をつくることができました。少しずつ毛が生えてくると、だんだんと目立たなくなってくることでしょう。
腫瘍は扁平上皮癌という悪性の腫瘍でしたので今後は術後の補助治療を検討しつつ注意深い経過観察が必要となります。
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